1. 「Webデザイン」というのは画面だけのデザインではなく、どちらかといえば長期にわたってじっくり使われるプロダクトデザインの領域に入る。
    プロダクトデザインといっても狭義では外形の造形をさすだけのこともあるが、もちろん広義では「いかに人の生活に役立つか」という観点でのトータルなデザインをさす。


    ここでいっているのはプロジェクトマネージメントやチーム構成、クライアントへの説明、といった話は抜きにした、本質的な意味でのデザインのことだ。
    つまり、一人で、自分のためにやるとしても有効な手法でなければならない。

    ただがむしゃらに絵を描いてもグラフィックデザインとして成立しないように(アートにはなるかもしれないが)、デザインの領域というのは過去の先例が理論として蓄積されている。
    グラフィックデザインがそのよい例で、もちろん理論を学んだだけでよいデザインつくれるわけでは全くないが、理論を知ることで他人もしくは自分のデザインを解釈することができるようになり、また、不必要な労力(車輪の再発明)を避けることができるようになる。

    しかしながら、「Webデザイン」と銘打たれた書籍、雑誌、セミナー、その他を見回しても、技術の話、表現の話ばかりが多く、「Webデザイン」の本質、あるいは「Webデザイン手法」はあまり語られていない。

    こういった「デザイン手法」の問題は、実は広告デザインではあまり重視されてこなかった。
    それは、広告デザインにおいては、そのプロセスよりもモチーフ(主題)のほうが重要であったからだ。

    しかしながら、Webサイトはモチーフだけで解決できるわけではない。
    システムもあれば、増え続ける情報もあれば、インタラクション、グラフィックとさまざまな要素を組み合わせて、1つのサイトにしなければならない。

    そういった意味で、商業デザインとして考えるとグラフィックの業界でもより奥行きがあるエディトリアルデザイン(雑誌や本のデザイン)との類似点は多く、また、広い意味のデザインで言えば建築などの手法から学ぶことが多い。

    と話がそれてしまった。

    Webデザインに応用できるこういった事例や理論は、Human Centered Design(人間中心設計)あるいはUser Centered Design(ユーザー中心設計)と呼ばれる分野で研究されてきている。
    しかしながら、やはり研究対象になってしまった結果として、どうしても検証可能なユーザー調査などの部分に重きがおかれてしまい、それらを組み合わせる「デザイン=設計」の部分は、まだブラックボックス化されている現状がある。

    もちろん、知的生産である以上、ある程度ブラックボックスであることは仕方がないが、それにしてもあきらめてしまうのはどうにも惜しい。
    建築では「デザインの思考過程」「パタンランゲージ」など、この知的創造作業にさまざまな理論化、解釈が行われている。
    それが建築の主流において有効に機能しているかは別として、すくなくとも僕にとっては上記の本をはじめとする検討は、Webデザインにおいても大変役立っている。

    最近では、書籍「Designing for the Digital Age」をはじめとして、この部分に風穴を開けるような取り組みも始まってきた。
    そして、まだ始まったばかりのWebデザインにおいては、これから「Webデザインとはなにか」が定義されるのだと思う。

    もちろん、そういった場合、HCDの分野で得られた数多くの知見や失敗例はWebデザイナーは役立てるべきであり、またHCDの研究者はWebデザインの現場で行われている数々の実践をもっと知るべきである。

    という願いを込めて、HCD-Net(人間中心設計推進機構)主催のかたちで、物作りとしてのWebデザインを実践されているAXISの宮崎さん、IMGSRCの小泉さんをお招きして、パネルディスカッションを開催します。

    Webデザイナーのみなさん、HCD研究者のみなさん、どちらもぜひご参加ください。